第5回 はじめよう! メタボリックシンドローム防止対策

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2006.09.01
虚血性心疾患の発症率は約30倍!
 「最近、おなかがぽっこりしてきたなぁ」
 「久しぶりに血圧を測ったら、上が140(mmHg)あってさぁ‥‥」

 こんな状況に、心当たりはありませんか?
 これらの身体のちょっとした変化は、「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)の症状かもしれません。今年5月に厚生労働省から、「40~70歳でみると、男性の2人に1人、女性の5人に1人が、メタボリックシンドロームが強く疑われる、または予備軍と考えられる」と発表されたことから、マスコミでも多く取り上げられ、一度は耳にしたことがある人も多いでしょう。

 「メタボリックシンドローム」とは、肥満に加え、従来から「サイレントキラー」などと呼ばれてきた生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病)の徴候を2つ以上もっている状態のこと。なんと、これらの徴候を3つ以上もつ人は、すべての項目に該当しない人に比べて、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)を発症する危険率が約30倍に跳ね上がるというデータも示されています。



メタボリックシンドロームの元凶は「内臓脂肪」
 内臓脂肪症候群という別名からもわかるように、一番大きな要因は肥満体に多く見られる「内臓脂肪」。脂肪細胞というのは、単にエネルギーを蓄えているだけではなく、ホルモンなどの生体活動に必要な物質を分泌して、身体の機能を調節する役割の一端を担っています。しかし、過剰にたまると調節機能が乱されて、血糖値や血圧が上昇したり、血液が固まりやすくなります。たかが「脂肪細胞」とあなどるなかれ。これらの異常によって、血管の壁は固く、厚くなり(動脈硬化)、血液の流れが悪くなるために、心臓病や脳卒中といった命に関わる病気につながっていくのです。

一つひとつは「軽症」でも、重なれば「重症」に!
 現在、日本人のメタボリックシンドロームの基準は、以下のように定められています

メタボリックシンドロームの診断基準
 ウエスト周囲径(へそ部分)男性85cm以上
女性90cm以上
上記に加えて、右のうち2つ以上が該当する場合血清トリグリセリド値150mg/dL以上
HDLコレステロール値40mg/dL未満
収縮期血圧(最高血圧)130mmHg以上
拡張期血圧(最低血圧)85mmHg以上
空腹時血糖値110mg/dL以上

 この基準、実は「病気予備軍」の数値ばかりが並んでいます。つまり、健康診断では「少し数値が高めなので注意してください」と注意されるレベル。けれども、メタボリックシンドロームの恐ろしいところは、一つ一つは軽症でも、いくつも積み重なることで一気に動脈硬化が進行しやすくなり、血管や心臓に大きな負担がかかることなのです。

対処法は自分の現状を知り、無理なくつづけることがポイント
 メタボリックシンドロームに該当するけれど、何から対処すればいいかわからない!なんて人も多いはず。そこで、まずは以下の3ステップから、メタボリックシンドローム防止対策を始めてはいかがでしょう。

ステップ1 ウエストを毎日測定する
 メタボリックシンドロームの基準のうち、内臓脂肪は「ウエスト周囲径(へそ部分)男性85cm以上、女性90cm以上」。そこで、毎日同じ状況(たとえば朝食前や入浴後など)で測り、自分自身の内臓脂肪の量を直視することが大切です。注意したいのが、いわゆる洋服のウエスト部分(一番細いところ)ではなく、へその周囲径で測るという点。「ズボンのサイズは80センチだからまだまだ安心」と思っていても、へそ部分で測定すると85センチを超えている、なんてことも。
 測定は、空腹時、立った姿勢で、軽く息を吐いて行いましょう。内臓脂肪は食事の見直しや運動の効果が出やすいので、測定をつづけることでその効果を実感し、習慣づけることができます。


ステップ2 一日の食生活をすべて見直す
 「メタボリックシンドローム防止には、食生活の見直しと運動が大切」といわれます。最近では、コンビニのお弁当や飲料にもカロリーが表示されていますが、低カロリーのものを選んでいても、なかなか体重も脂肪も落ちない! というのが本音では。
 朝・昼・晩の食事については気にする人が多いものの、意外と見落としがちなのが間食。アメ玉1つのカロリーは小さくても、ついつい何度も口に運んでしまいがち。また、晩酌でビールを何杯も飲んだり、食後にデザートをたっぷり食べたりしては、元も子もありません。
 そこで、おすすめなのが、「食事記録」をつけること。携帯電話についているカメラなどを活用すると、いつでもどこでも簡単に記録できます。通勤途中に食べたアメやガム、仕事中に飲んだ缶コーヒー、晩酌のビールなど、口に入れたもののすべてを撮っておきます。2~3日つづければ、食べたことを忘れてしまっている余分なカロリー摂取が見えてくるはず。また、一日を通じた食事内容のバランスもチェックすることができます。

ステップ3 まずはストレッチから
 内臓脂肪を減らしたり、血圧や血糖値を下げるためにも、運動は効果的な手段です。けれども、日ごろ運動習慣のない人が急に激しい運動を始めると、ケガをしたり、疲れがたまって次の日に影響することも。
そこで、まず取り入れたいのが「ストレッチ」
 「ストレッチなんて運動にならないのでは?」と思われがちですが、実は軽いウォーキングと同じぐらいのカロリーを消費する運動。 
 呼吸は止めずに、各筋肉が気持ちよく伸びる程度の強度で行いましょう。今、どこの筋肉が伸びているのかを意識しながら、ふくらはぎや股関節、背中や腕の筋肉も伸ばしてみてください。1ヵ所ごとに30秒ぐらい伸ばしていくと効果的。
 ストレッチをつづけることで、硬くなった筋肉が徐々にほぐれ、運動をしてもケガをしにくい身体になっていきます。ストレッチに慣れたら、ウォーキングなども取り入れていきましょう。



フジモトナオコ
医学ライター。国内外の医学学会取材を中心に,医療者・患者に向けた情報を発信している。


  食生活を工夫して、脂質摂取を減らそう!

 内臓脂肪を蓄える一番の要因は、エネルギーの過剰摂取によるものです。ですので、内臓脂肪を減らしたいときには、まず摂取エネルギーを減らすことが必要となります。エネルギーを作り出す栄養素は、糖質、脂質、たんぱく質。
 中でも、脂質は1gあたり9kcalと、糖質やたんぱく質の4kcalに比べて大量のエネルギーを摂取してしまいやすい栄養素です。摂取エネルギーを減らしたいときには、なるべく脂質を摂らないようにすることが大切。揚げ物、炒め物などの油を使う料理を避ける、肉類を魚類に置き換える、主食はパンではなく米にする‥‥。
 いろいろな食材に含まれている脂質の摂取を減らすには、これまでの食事を改善することが必要となります。それはとても大変なことですが、脂質が少ない食事は、メタボリックシンドロームの予防・改善だけでなく、その他の疾病予防にも役立つので、これを機に健康的な身体をつくる食生活を実践されてみてはいかがでしょうか。

管理栄養士 志水あい


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