女性の薄毛(FAGA)は、生活習慣を整えれば防げるという病気ではありません。日本皮膚科学会も、抜け毛を防ぐ特別な予防法はないとしたうえで、健康的な生活とヘアケアで抜け毛の原因をつくらないこと、そして早めに受診することを勧めています。
判断の分かれ目は、セルフケアで様子を見続けるか、早めに皮膚科で原因を確かめるかです。この記事では、見直したい生活習慣とヘアケア、受診のサイン、女性型脱毛症の治療の選択肢を、日本皮膚科学会の資料をもとに整理します。
この記事のまとめ
- 女性型脱毛症は男性ホルモンの影響について明確なデータがない(AGAとは別に扱われる)
- 抜け毛を防ぐ特別な予防法はなく、バランスの良い食事・休息・髪を引っ張らない髪型が基本
- 甲状腺の病気や過激なダイエットなどほかの原因の脱毛もあるため、気になったら早めに皮膚科へ
- 治療で最も勧められるのはミノキシジルの外用(AGAの飲み薬は女性には使わない)
※日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」とガイドライン2017年版の記載。詳細は本文で。
この記事の書き方について
当サイトでは、利用者の体験談や口コミを掲載していません。「FAGA」は女性の薄毛を指してクリニックなどで使われる呼び方で、医学的には「女性型脱毛症」と呼ばれます。病気と治療の説明は、日本皮膚科学会の資料をもとに書いています。
この記事で紹介する生活習慣は、抜け毛の原因をつくらないための一般的な工夫で、薄毛を治す効果が確かめられたものではありません。記事の作り方はコンテンツ制作方針に記載しています。
抜け毛の原因をつくらないために見直したい4つの習慣
女性型脱毛症(FAGA)は、男性型脱毛症(AGA)と違い、男性ホルモンの影響について明確なデータがないとされています。女性ホルモンの状態など、さまざまな理由で起こる場合が多いと考えられています(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q8)。そのため、生活習慣を整えれば防げるというものではありませんが、抜け毛の原因をつくらないために、次の4つの領域を見直しておきましょう。
- 食事・栄養:毛根に届く栄養素の質と量
- 睡眠・ストレス:体への負担と休息
- ヘアケア・スタイリング:頭皮と髪の物理的・化学的ダメージ
- 血流・運動:体を動かし、こりをほぐす習慣
これらはいずれも、薄毛を治す方法ではなく、抜け毛の原因をつくらないための基本的な習慣です。それぞれの領域で、気をつけたいポイントを見ていきましょう。
「頭皮の栄養不足」を引き起こす食事の落とし穴
髪は、毛根にある毛母細胞が分裂・成長することで作られます。その材料となるのは、血液を通じて運ばれてくる栄養素です。つまり、食事内容は毛根に直接届く「建材」の質を決定します。特に注意すべきは、以下のような栄養バランスの偏りです。
- 過度な糖質制限や偏ったダイエット:髪の主成分であるケラチンはタンパク質から作られます。タンパク質の摂取が不足すると、身体は生命維持に優先的に栄養を使うため、毛髪への栄養供給が後回しにされます。
- 加工食品や外食の頻度が多い:ビタミンB群(特にビオチン)、ビタミンC、亜鉛、鉄分といった微量栄養素が不足しがちです。これらはタンパク質の合成や頭皮の健康維持に不可欠であり、不足すると毛髪の質が低下したり、成長サイクルが乱れる原因になります。
- 脂質の質に無頓着:トランス脂肪酸や酸化した油の過剰摂取は、身体の炎症を促進し、頭皮環境の悪化につながる可能性があります。一方で、良質なオメガ3脂肪酸(魚油など)は抗炎症作用があり、頭皮の健康をサポートします。
食事の改善は、「特定のサプリメントだけを摂る」ことではなく、多様な食品からバランス良く栄養を摂取することが基本です。これにより、毛根に十分な「建材」が安定供給されるようになります。
「毛根の休む時間」を奪う睡眠とストレスの悪循環
髪の毛は「成長期」「退行期」「休止期」というサイクルを繰り返します。このサイクルを正常に保つ上で、睡眠とストレスは極めて重要な役割を担っています。
まず睡眠について。睡眠は体の回復に欠かせません。睡眠時間が短かったり質が低かったりする生活が続くと、体に負担がかかります。
次にストレスです。女性型脱毛症とストレスの関係について、日本皮膚科学会のQ&Aは明確なデータを示していません。ただし、身体に過度の負担がかかることで起こる脱毛(休止期脱毛)があることから、無理をせず適度に休息をとり、規則正しい生活を送ることが重要だとしています(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q18)。
睡眠不足や無理が続く生活は、体に負担をかけます。体に大きな負担がかかったあとには、一時的に抜け毛が増える「休止期脱毛」が起こることも知られています。
「見えないダメージ」の蓄積に注意したいヘアケア習慣
美しくスタイリングしたいと思うあまり、頭皮や髪に過度な負担をかけていませんか?日常的なヘアケアやスタイリングの習慣が、知らず知らずのうちに頭皮環境を悪化させ、抜け毛を増やしているケースがあります。
- 強い力でのブラッシングや結髪:ポニーテールなどで常に髪を強く引っ張ると、「牽引性脱毛症」のリスクがあります。また、濡れた髪を無理に梳かすことは、キューティクルを傷め、切れ毛や枝毛の原因となるだけでなく、毛根に物理的ストレスを与えます。
- 高温のスタイリング器具の使いすぎ:ドライヤーやヘアアイロンの熱が直接頭皮に当たると、頭皮の乾燥や火傷のような軽度の熱傷を引き起こし、毛根を弱らせることがあります。
- 洗浄力が強すぎるシャンプーや誤った洗髪法:必要以上に皮脂を落としすぎると、頭皮は乾燥から守ろうと逆に過剰な皮脂分泌を招くことがあります。また、爪を立ててゴシゴシ洗うことは、頭皮を傷つけ炎症の原因になります。
- スタイリング剤の付けすぎ・落とし残し:頭皮に直接スプレーやワックスなどが付着し、毛穴を塞ぐことで、頭皮の呼吸や排泄機能を妨げ、炎症や菌の繁殖を招く可能性があります。
これらの習慣は、一度や二度では大きな問題にならなくても、毎日続けば頭皮と髪の負担になります。特に髪を強く引っ張る髪型は、牽引性脱毛症の原因になることがあります。
今日から変えられる食事習慣|毛髪をつくる栄養素と摂取の工夫
日本皮膚科学会は、髪の毛の新陳代謝には各種のビタミン、ミネラルが関係しているため、バランスのとれた食生活を心がけることを勧めています(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q18)。ここでは、毎日の食事で意識したい栄養素と、忙しい日でも取り入れやすい工夫を紹介します。
タンパク質・亜鉛・ビタミンB群を意識した1週間の献立例
髪の毛は、主にケラチンというタンパク質でできています。そのため、良質なタンパク質をしっかり摂ることが基本です。亜鉛やビタミンB群などのビタミン・ミネラルも、髪の新陳代謝に関わっています。
- タンパク質:毛髪の主原料。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品に豊富。
- 亜鉛:タンパク質の合成や代謝を助ける。牡蠣、レバー、ナッツ、ごまに含まれる。
- ビタミンB群:特にB2、B6、B12が頭皮の健康やタンパク質代謝に関わる。レバー、うなぎ、納豆、玄米に多い。
これらを意識した献立の組み立て方は難しくありません。例えば、朝食に目玉焼きと納豆、昼食に鮭の塩焼き定食、夕食に鶏肉のソテーとほうれん草のおひたしを選ぶだけで、自然と必要な栄養素を摂取できます。週に一度はレバニラ炒めや牡蠣フライを取り入れるのもおすすめです。
献立に迷ったら、「主菜(タンパク源)+副菜(ビタミン・ミネラル源)+主食(玄米や雑穀米でビタミンB群補充)」の組み合わせを思い出しましょう。
コンビニ食や外食でも選びたい「育毛サポート食材」
忙しい日々の中で、コンビニや外食に頼らざるを得ないこともあるでしょう。そのような場合でも、少し選び方を工夫するだけで、髪に優しい食事に近づけることができます。
- サラダチキンやゆで卵:手軽に良質なタンパク質を補給できます。
- 納豆巻きやいなり寿司:大豆製品は植物性タンパク質とイソフラボンの宝庫です。
- ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ):亜鉛やビタミンEが摂れる間食として優秀です。
- 海藻サラダやひじきの煮物:ミネラルを補えます。
外食では、単品のラーメンやパスタよりも、定食スタイルを選ぶことがポイントです。焼き魚定食や生姜焼き定食など、主菜と副菜がセットになったものを選べば、自然と栄養バランスが整いやすくなります。
| 選びたいメニュー例 | 避けたい傾向のメニュー例 |
|---|---|
| 焼き魚定食(主菜+副菜2品) | チャーシューラーメン単品 |
| サラダチキンと野菜サラダのセット | 菓子パンと清涼飲料水だけの食事 |
| 具だくさん味噌汁とおにぎり(鮭や昆布) | インスタント食品やスナック菓子 |
過度なダイエットが薄毛を招く理由とその回避策
無理な食事制限による急激なダイエットは、抜け毛の原因になります。過激なダイエットのあとに抜け毛が増える休止期脱毛が知られており(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q17)、ガイドラインも、女性型脱毛症と見分けるべき脱毛として急激なダイエットに伴う脱毛を挙げています(ガイドライン2017)。
健康的な体重管理と育毛を両立させるためには、以下のポイントを押さえましょう。
- 極端な糖質制限や単品ダイエットは避ける:必要な栄養素が偏り、髪の材料そのものが足りなくなります。
- タンパク質の量を保ちながら総カロリーを調整する:おかず(タンパク質)はしっかり食べ、ご飯やパン(糖質)の量を少し控えめにするなど、栄養素のバランスを崩さない方法を選びます。
- 野菜はたっぷり摂る:ビタミンや食物繊維が豊富な野菜は、代謝をサポートし、満腹感も得られます。生野菜だけでなく、温野菜やスープでかさを減らしてたくさん食べる工夫を。
- 間食を見直す:スイーツやスナック菓子の代わりに、ヨーグルト、ナッツ、ドライフルーツなどを適量摂るようにします。
食事は毎日の習慣です。完璧を目指すのではなく、できることから少しずつ改善していくことが、髪にも体にも持続可能なアプローチです。まずは今晩の食事から、一皿でも「育毛サポート食材」を加えてみてはいかがでしょうか。
睡眠の質を整えて、体を休める
規則正しい生活と十分な休息は、抜け毛の原因をつくらないための基本です(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A Q18)。ここでは、眠りの質を整えるための習慣を紹介します。
就寝90分前からの「頭皮リラックスルーティン」
スムーズな入眠と深い睡眠を得るためには、就寝前の時間の過ごし方が重要です。特に、自律神経のうちリラックスを司る「副交感神経」を優位に導くことがポイントになります。心身が興奮状態のままベッドに入っても、なかなか眠りにつけず、成長ホルモンの分泌にも影響します。
そこでおすすめなのが、就寝の90分前から始める頭皮を含めたリラックスルーティンです。この時間帯に体温を適度に上げておくと、その後、体温が下がる過程で自然な眠気が訪れる仕組みを利用できます。
就寝90分前に、38度から40度程度の少しぬるめのお湯に15分ほど浸かります。熱いお湯は交感神経を刺激するため避けましょう。この入浴で深部体温が上がり、その後ゆるやかに下がるタイミングで眠気が促されます。
入浴後、ベッドに入る前に、指の腹を使って頭皮全体をやさしくほぐします。特にこりを感じる首の後ろやこめかみの周りを軽く押すと、緊張が和らぎます。爪を立てず、皮膚を動かすイメージで行いましょう。
入浴後の時間は、スマートフォンやパソコンの画面を見るのを控えます。代わりに、読書をしたりストレッチをしたり、間接照明のもとでリラックスします。これにより、眠気を誘うメラトニンの分泌が妨げられません。
光と温度から考える、寝室環境の整え方
眠りにつくまでの行動だけでなく、眠る環境そのものも睡眠の質に大きく影響します。寝室は単に寝るだけの場所ではなく、良質な睡眠を生み出すための工房と捉え、少しずつ整えていくことが大切です。
- 完全な暗闇に近い状態を作れていますか? 遮光カーテンやアイマスクが有効です。
- 室温は夏は26度前後、冬は16度から19度程度に保てていますか? エアコンや加湿器を活用しましょう。
- 寝具は体に合ったものを選んでいますか? マットレスや枕の硬さや高さは定期的に見直すことをおすすめします。
- 寝室には仕事の資料や気になるものを置かず、リラックスできる空間になっていますか?
- 就寝1時間前には、室内の照明を暖色系の間接照明に切り替えられていますか?
光の影響は特に大きく、ほんの少しの光でもメラトニンの分泌が抑制されてしまいます。テレビやスマートフォンの待機灯、街灯の光などにも注意が必要です。また、寝室の温度や湿度が適切でないと、夜中に目が覚める原因となり、深い睡眠が妨げられます。
休日の寝だめが逆効果になるメカニズム
平日の睡眠不足を補おうと、休日に長時間寝る「寝だめ」は、体内時計を乱し、睡眠の質を低下させる可能性があります。
平日と休日の起床時間の差は、なるべく小さくするのが理想です。疲れが取れない場合は、長く寝るよりも、午後の早い時間に短い昼寝をとるほうが、夜の睡眠に影響しにくくなります。
睡眠は、毎日少しずつ積み上げていくものです。今日からできる小さな習慣の見直しが、髪が育つ土壌を健やかに保つ第一歩となります。
無理をしない生活とストレスとの付き合い方
食事や睡眠と並んで、無理をしすぎない生活を送ることも、抜け毛の原因をつくらないために大切です。ここでは、日常の中でできるストレスとの付き合い方を紹介します。
体への負担と抜け毛の関係
大きな手術や重い感染症、妊娠・出産、過激なダイエットなど、体に大きな負担がかかったあとに、一時的に抜け毛が増える「休止期脱毛」という現象が知られています(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q17)。日本皮膚科学会も、無理をせず適度に休息をとり、規則正しい生活を送ることが重要だとしています(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q18)。
ストレスは「感じている自覚」だけでなく、知らず知らずのうちに身体に蓄積する「無自覚なストレス」も存在します。長時間のパソコン作業による眼精疲労や、不規則な生活リズム、人間関係の小さな緊張なども、自律神経には負担となります。薄毛対策では、こうした日常に潜むストレス要因にも目を向けることが大切です。
5分でできるオフィスや自宅での「マイクロブレイク」
ストレスをゼロにすることは不可能ですが、その影響を小さくする工夫はできます。特におすすめなのが、短時間でできる「マイクロブレイク」です。長時間同じ姿勢で作業を続けると、首や肩の筋肉が緊張し、頭皮の血行も悪くなります。これを防ぐために、1時間に一度、たった5分間の休憩を意識的に取り入れてみましょう。
今日から試せるマイクロブレイク例
- 深呼吸:椅子に深く腰かけ、背筋を伸ばします。鼻からゆっくりと4秒かけて息を吸い、口から6秒から8秒かけて細く長く吐き出します。これを5回繰り返すだけでも、副交感神経が優位になり、リラックス効果が得られます。
- 軽いストレッチ:首をゆっくりと前後左右に倒したり、肩を大きく回したりします。腕を上に伸ばして背筋を伸ばす動作も、凝り固まった筋肉をほぐし、血流を改善します。
- 目を休める:パソコンやスマートフォンから目を離し、窓の外の遠くを見つめます。まばたきを意識的に増やし、目の周りの筋肉をリラックスさせましょう。
これらの行動は、自律神経のスイッチを「緊張モード」から「休息モード」へ切り替える合図となります。継続することで、ストレスに対する身体の反応そのものを和らげる効果も期待できます。
リラックスのための頭皮マッサージ
頭皮マッサージは、リラックスのために取り入れやすいセルフケアです。ただし、薄毛を治す効果が確かめられたものではありません。力を入れすぎて頭皮を傷めたり、髪を引っ張ったりしないよう、優しく行いましょう。
椅子に座るか、あぐらをかいてリラックスします。肩の力を抜き、爪は短く切っておきましょう。頭皮用のオイルやローションを少量つけると、滑りが良くなり摩擦を軽減できます。
手のひら全体を使って、頭全体を包み込むように優しく押します。耳の上、こめかみ、後頭部など、頭皮全体に均等に圧をかけて温めます。30秒から1分程度行いましょう。
両手の指の腹を頭皮に当てます。親指はこめかみに固定し、他の指で頭頂部から生え際に向かって、小さな円を描くように動かします。特に頭皮が硬く感じる部分は、ゆっくり丁寧にほぐします。
額の生え際から頭頂部、耳の上から頭頂部、後頭部の生え際から頭頂部へと、指の腹で少しずつ位置をずらしながら押し上げるようにマッサージします。頭皮が動くのを感じる程度の力加減が目安です。
このマッサージを、入浴後や就寝前など、一日のうちリラックスできる時間に、3分から5分程度行うのが理想的です。頭皮がほぐれて血行が良くなると、顔色が明るくなるなど、副次的な美容効果も感じられるかもしれません。
マッサージ中に痛みを感じたら、すぐに力を弱めたり中止しましょう。強い刺激は頭皮にダメージを与え、炎症を引き起こす可能性があります。また、抜け毛が急増している急性期や、頭皮に湿疹や傷がある場合は、マッサージを控えて専門医に相談してください。
まずは「深呼吸」や「短い休憩」といった小さな習慣から始めてみてください。頭皮マッサージも、日々のリラックスタイムに取り入れやすい方法です。
頭皮と髪に優しいヘアケアの実践
毎日のヘアケア習慣は、頭皮と髪に直接影響します。ここでは、頭皮と髪に負担をかけにくいヘアケアの方法を紹介します。
シャンプー選びのポイントと正しい洗髪方法
頭皮の洗浄は汚れを取り除く一方で、過度に行うと皮脂を取りすぎてバリア機能を低下させます。洗浄力が強すぎるシャンプーや、一日に何度も洗う習慣は、頭皮を乾燥させてかゆみやフケを招き、かえって皮脂分泌を過剰にする可能性があります。
- シャンプー選びの基本:アミノ酸系などの洗浄成分がマイルドなものを選びます。敏感肌用や頭皮用と記載された製品も選択肢の一つです。香料や着色料が少ないシンプルな処方のものを試してみるとよいでしょう。
- 洗髪の頻度:基本的には1日1回、夜のうちに洗うことをおすすめします。朝シャンは夜の間に分泌された皮脂を落とせないため、日中に汚れが残りやすくなります。
- 洗う前にすること:ブラッシングでほこりやスタイリング剤の塊を落とし、ぬるま湯で予洗いを十分に行います。これだけで、汚れの大半は落ちると言われています。
手のひらにシャンプーを少量取り、十分に泡立ててから頭皮につけます。原液を直接頭皮につけると摩擦や洗剤の濃度が高くなるため避けましょう。
爪を立てず、指の腹を使って頭皮全体を優しくマッサージするように洗います。強くこすったり、もみ洗いをしたりしないことが大切です。
泡が残らないよう、時間をかけて丁寧にすすぎます。特に生え際や後頭部はすすぎ残しが多い部分です。シャンプー成分の残留は頭皮トラブルの原因になります。
タオルで軽く水気を拭き取った後、すぐにドライヤーを使い始めます。温風と冷風を交互に使い、頭皮と髪の根元からしっかり乾かしましょう。自然乾燥は雑菌が繁殖しやすい環境を作ります。
スタイリング剤やドライヤーの熱から頭皮を守る
美しい髪型をキープするためのスタイリング剤やドライヤーの熱は、使い方次第で頭皮と髪に大きなストレスを与えます。特に熱ダメージは髪のキューティクルを痛め、切れ毛や枝毛を増やすだけでなく、頭皮の乾燥を招くこともあります。
| 適切な方法 | 不適切な方法 |
|---|---|
| ドライヤーは頭皮から15cm以上離す | 頭皮に近づけすぎて熱を集中させる |
| 温風と冷風を交互に使い、一か所に長時間あてない | 同じ部分に高温の温風を当て続ける |
| スタイリング剤は髪の中間から毛先に少量を使う | 頭皮に直接スプレーやワックスを塗布する |
| 就寝前にはスタイリング剤を洗い流す | スタイリング剤をつけたまま寝る |
ドライヤーの温度は、熱すぎず冷たすぎない温風を基本とします。高温設定は短時間で乾かせますが、頭皮の乾燥を早めます。頭皮が触れて熱いと感じる距離は近すぎるサインです。また、スタイリング剤の残留は毛穴詰まりの原因となり、頭皮環境を悪化させます。使用後は必ずシャンプーで洗い流す習慣をつけましょう。
ブラッシングと結髪が与える物理的ストレスを軽減する
ポニーテールや編み込み、お団子など、髪が強く引っ張られる髪型を習慣的に続けると、髪が抜ける「牽引性脱毛症」が起こることがあります。初期なら髪型をやめることで元に戻りますが、長く続いて毛包まで障害を受けると、永久的に髪が生えてこなくなることもあります(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q16)。
以下の習慣は、頭皮と髪の毛根に継続的な負担をかけ、薄毛を悪化させるリスクがあります。
- 濡れた髪を無理にブラッシングする(髪が最も傷みやすい状態です)
- ゴムできつく縛るポニーテールや、常に同じ位置で結ぶ習慣
- 寝るときにきつい三つ編みをしたままにする
- 細かい目で強引に梳かすブラッシング
- 長時間、ヘアピンやクリップで頭皮を強く圧迫する
ブラッシングは、毛先から少しずつ梳かし、絡まりを解いてから根元に向かって梳かします。結髪はできるだけ緩く結び、毎日同じスタイルを続けないことが大切です。
これらのヘアケアの見直しは、今日からすぐに始められる具体的なアクションです。一気に全てを変えようとすると継続が難しくなるため、まずはシャンプーの方法やドライヤーの使い方など、一つずつ改善していくことをおすすめします。頭皮に優しい習慣が定着すれば、内側からのケアの効果もより実感しやすくなるでしょう。
生活習慣改善を長続きさせるための工夫
食事、睡眠、ストレスケア、ヘアケア。見直したい習慣はいくつもありますが、すべてを一度に完璧にこなそうとすると負担が大きくなり、続かなくなりがちです。ここでは、良い習慣を無理なく続けるための工夫を紹介します。
「全部完璧」を目指すと続かない|まずは1つから始める
まずは、自分にとって最もハードルが低く、続けられそうな習慣をひとつだけ選びましょう。たとえば、「寝る時間を30分早める」や「シャンプー時に頭皮マッサージを1分加える」など、小さなことからで構いません。これを2週間、1ヶ月と続け、「できた」という成功体験を積むことが、次の一歩への確かな自信になります。
- 取り組む習慣は一度に1つか2つに絞る。
- 「今日はできなかった」があっても気にしすぎない。
- 小さな成功を自分で認め、ほめる習慣をつける。
生活習慣の改善は、大きな変化を一度に起こすよりも、小さな変化を持続させるほうが、長期的にははるかに大きな成果を生みます。頭皮環境の改善に必要なのは、一時的な努力ではなく、日常に溶け込んだ持続的なケアです。最初の一歩を踏み出す勇気と、続けるための工夫に目を向けてみましょう。
変化を記録してモチベーションを維持する方法
頭皮や髪の状態は少しずつ変化するため、日々の違いに気づきにくいものです。モチベーションを保つためには、客観的に変化を確認できる記録をつけることが有効です。専用のアプリや手帳を用意し、以下のような項目を簡単に記録してみましょう。
- 朝の枕やブラシについた抜け毛の本数(週1回程度)
- 頭皮の状態(赤み、かゆみの有無)
- 実践したケアの内容(例:22時に就寝、頭皮マッサージ実施)
- 撮影した頭頂部などの写真(1〜2ヶ月に1回、同じ条件で)
記録を見返すことで、「抜け毛の本数が減った」「頭皮の調子が良い日が増えた」といった小さな改善に気づけます。これは「続けてよかった」という実感につながり、次の行動の大きな原動力になります。
抜け毛が気になったら、早めに皮膚科へ
抜け毛の原因はさまざまで、治療法も原因によって異なります。日本皮膚科学会は、抜け毛が生じた場合は皮膚科など専門の医療機関を受診し、変化に早めに気づいて、できるだけ早く受診することが大切だとしています(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q18)。甲状腺機能低下症や亜鉛欠乏症、膠原病など、ほかの病気が原因の脱毛もあり、病気によっては治療が遅れると毛が生えなくなることもあります(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q17)。
自己流のケアだけを長く続けると、治療の開始が遅れることがあります。生活習慣の見直しは受診と並行して続けられるので、「まずは様子を見る」より「まずは相談する」を優先しましょう。
女性型脱毛症の治療で最も勧められている薬はミノキシジルの外用剤です(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q9)。ガイドラインでは、女性型脱毛症に1%ミノキシジルの外用が推奨度A(行うよう強く勧める)とされています(ガイドライン2017)。
| 治療 | 皮膚科Q&A(Q9)での位置づけ |
|---|---|
| ミノキシジルの外用 | 最も勧められる |
| 低出力の光・レーザー照射 | 次に勧められる |
| アデノシン、カルプロニウム塩化物の外用など | 行ってもよい |
| フィナステリド・デュタステリドの内服 | 有効性が確立されておらず、妊娠の際の副作用の問題などから行うべきではない |
※いずれも保険診療外の治療です(皮膚科Q&A Q9)。男性型脱毛症(AGA)の飲み薬は女性には使いません。
- 生活習慣を変えようとすると、すぐに挫折してしまいます。
-
無理のない目標設定が鍵です。「毎日」ではなく「週に3日から」始める、時間を決めてアラームをセットする、家族に宣言してサポートしてもらうなど、続けやすい環境を整える工夫をしてみましょう。完璧を求めず、「できた日」に焦点を当ててください。
- 記録をつけても、なかなか変化が実感できません。
-
髪の生え変わりには時間がかかるため、数日や数週間ではなく、数か月単位で経過を見ることが大切です。ただし、抜け毛が急に増えた、地肌が目立つ範囲が広がっているなど、気になる変化がある場合は、記録を持って早めに皮膚科を受診しましょう。
クリニックを選ぶときに確かめたい点は、FAGAのクリニック選び|信頼できる医師を見極める6つのチェックポイントで整理しています。
出典
- 公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q8 https://qa.dermatol.or.jp/qa11/q08.html
- 公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q9 https://qa.dermatol.or.jp/qa11/q09.html
- 公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q16 https://qa.dermatol.or.jp/qa11/q16.html
- 公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q17 https://qa.dermatol.or.jp/qa11/q17.html
- 公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」Q18 https://qa.dermatol.or.jp/qa11/q18.html
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
