医療機関で減量治療を続けているのに、ある時期から体重計の数字が動かなくなると、「治療が効かなくなったのでは」「自分の努力が足りないのでは」と不安になるものです。
判断の分かれ目は、体重が止まる仕組みを知ったうえで、自己判断で食事を極端に減らさず、記録を持って医師に相談できるかどうかです。この記事では、停滞期が起こる理由と、見直したいこと、相談の目安を、研究と厚生労働省の資料をもとに整理します。
この記事のまとめ
- 減量の取り組みでは、はじめに体重が減り、数か月で止まる経過が広くみられる
- 体重が減ると消費エネルギーが少し下がり、それ以上に食欲が強まる。この食欲の変化が、停滞の大きな要因と考えられている
- 停滞期でも食事を極端に減らさない。主食・主菜・副菜をそろえ、日常の活動量を増やす
- 薬を使う減量治療は、承認された効能以外での使用なら公的な救済制度の対象外。効果やリスク、費用の説明を受けてから続ける
※研究論文と、厚生労働省のe-ヘルスネット・医療広告ガイドラインなどによるもの。詳細は本文で。
この記事の書き方について
当サイトでは、利用者の体験談や口コミを掲載していません。医療に関する広告では、患者の主観や伝聞にもとづく体験談などが医療法で禁止されており、厚生労働省は2025年8月15日付の通知「美容医療に関する取扱いについて」(医政発0815第21号)でこれを改めて示しています。(厚生労働省の通知本文)
停滞期の仕組みについての記載は、米国国立衛生研究所(NIH)の研究者による総説と、豪州メルボルン大学の研究(いずれも論文データベースPubMedに掲載)、食事と身体活動の記載は厚生労働省の「e-ヘルスネット」、減量目的の薬の扱いは厚生労働省の資料(2026年10月19日時点)によるものです。この記事は一般的な情報で、診断や治療の判断は医師の診察で行われます。記事の作り方はコンテンツ制作方針に記載しています。
停滞期はなぜ起こる?
体重は、はじめに減り、数か月で止まりやすい
米国国立衛生研究所(NIH)のHallらは2018年の総説で、肥満の治療では、はじめに体重が速く減り、数か月で減らなくなり、その後少しずつ戻るという経過が、方法を問わずほぼ共通してみられると説明しています。治療の方法によって減る量や戻る量は違っても、全体の経過は似ているとしています(Hall KD, Kahan S. 2018)。
つまり、ある時期に体重が止まること自体は、多くの人に起こる経過です。停滞したからといって、治療や努力がむだになったわけではありません。
消費エネルギーが下がり、それ以上に食欲が強まる
同じ総説によると、体重が1kg減るごとに、1日の消費エネルギーは約20〜30kcal下がる一方で、食欲は減量前より約100kcal強まると推定されています。体重を調整するしくみのうち、食べる量にはたらく力のほうが強く、代謝が落ちることよりも食欲の変化のほうが、停滞の大きな要因と考えられています(Hall KD, Kahan S. 2018)。
食欲にかかわるホルモンの変化も報告されています。豪州メルボルン大学のSumithranらは、10週間の低エネルギー食による減量プログラムに参加した50人を対象に調べ、減量後に満腹にかかわるレプチンなどが減り、空腹にかかわるグレリンなどが増え、空腹感も強まったと報告しました。これらの変化は、減量から1年たっても元に戻っていなかったとしています(Sumithran P, et al. 2011)。
自分を責めなくてよい
Hallらは、こうした体の反応は予測できるものなのに、患者は自分を怠けている、意志が弱いと責めがちで、医療者の側もそれを強めてしまうことがあると指摘しています。そのうえで、肥満の治療には、継続的な医療者のかかわりと、減量後の維持に向けた支援が必要だとしています(Hall KD, Kahan S. 2018)。
停滞期に見直したいこと

体重計の数字は、増減の傾向で見る
厚生労働省のe-ヘルスネットは、体脂肪率も測れる体重計は機種によって推定方法や判定基準が異なることがあり、体脂肪率の正確な測定は困難だとしています。一定の誤差があることを理解したうえで、目安のひとつとして、測定値の増減の傾向を把握するよう勧めています(e-ヘルスネット「肥満と健康」)。毎日の小さな上下より、数週間の流れを見ましょう。
食事を極端に減らさず、具体的な目標にする
e-ヘルスネットは、減量に取り組むときは、特定の食品を抜いたり極端に食事量を減らしたりするのではなく、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を基本にするよう勧めています。「減らす」「控える」といった漠然とした目標ではなく、「ご飯は1膳まで」「間食は1日1回まで」と具体的に決めると実践しやすく、できない日があっても複数日で調整するなど、計画に柔軟性を持たせることが大切だとしています(e-ヘルスネット「肥満・メタボリックシンドローム予防の食事」)。
同じページでは、3〜4%の緩やかな減量でも、検査値の異常は改善するといわれていると紹介しています(e-ヘルスネット)。目標の体重に届く前に止まっても、それまでに減った分にも意味があります。
運動だけでなく、日常の活動量を増やす
e-ヘルスネットによると、1日の総エネルギー消費量は、基礎代謝量(約60%)、食事誘発性熱産生(約10%)、身体活動量(約30%)で構成され、このうち個人内で大きく変わるのは身体活動量です。身体活動には運動のほかに、家事などの日常生活活動(非運動性身体活動、NEAT)が含まれます(e-ヘルスネット「身体活動とエネルギー代謝」)。
同ページは、肥満の人は肥満でない人に比べて、歩行なども含めた立っている時間が平均で1日約150分少なかったという研究を紹介し、座っている時間を減らし、家事などの日常の活動を積極的に行うことも肥満予防のポイントだとしています(e-ヘルスネット)。
医師に相談するときに伝えたいこと

停滞が続いて不安なときは、自己判断で食事をさらに減らしたり、治療を急に変えたりする前に、担当の医師に相談しましょう。次のような記録があると、状況を伝えやすくなります。
- 体重(と体脂肪率)の推移。数週間分をまとめたもの
- 食事の内容と量、間食や飲酒の回数
- 歩数や運動、座っている時間など、日常の活動量の変化
- 空腹感の強さや、気分・睡眠・体調の変化
- 使っている薬(減量のための薬を含む)と、気になる症状
e-ヘルスネットは、食事記録をつけると、いつ、どんなときに、何を食べて、どう感じたかがわかり、課題や改善点を見える形にできるとしています(e-ヘルスネット)。
減量治療の主なリスクと、薬を使うときの注意
糖尿病の治療薬を、減量目的で使う場合
厚生労働省は、2型糖尿病の治療薬などとして承認されているGLP-1受容体作動薬を、承認された効能以外(適応外)で美容・痩身・ダイエット目的に使う自由診療について、患者が安全性や有効性を理解したうえで受診することが重要だとしています(厚生労働省 医薬品等行政評価・監視委員会 資料(2025年9月10日))。
同じ資料では、医療機関に対して、効果の程度には個人差があることを直接丁寧に説明すること、即日施術の強要は厳に慎むこと、費用や解約条件を施術前に丁寧に説明することを求めています(厚生労働省の資料)。
適応外の使用は、公的な救済制度の対象外
国内で承認された医薬品による副作用で健康被害があったときには、医薬品副作用被害救済制度があります。ただし、承認された医薬品であっても、原則として決められた効能・効果や用法・用量などに従って使用されていない場合は、救済の対象にならないとされています(厚生労働省「医療広告ガイドライン」)。
- 薬が承認された効能の範囲で使われているか(適応外かどうか)
- 主な副作用と、症状が出たときの連絡先
- 効果の見込みには個人差があること
- 総額の費用と、途中でやめるときの条件
治療を始める前や続けるかどうか迷うときは、これらの説明を受け、理解したうえで判断しましょう。
医療機関での減量と停滞期についてよくある質問
- 停滞期はどれくらいで来ますか?
-
NIHの研究者による総説では、肥満の治療では、はじめに体重が速く減り、数か月で減らなくなる経過が広くみられると説明されています。時期には個人差があるため、気になるときは担当の医師に相談しましょう。
- 停滞期は食事をもっと減らしたほうがよいですか?
-
厚生労働省のe-ヘルスネットは、特定の食品を抜いたり極端に食事量を減らしたりするのではなく、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を基本にするよう勧めています。自己判断で大きく減らす前に、医師に相談しましょう。
- 体重が減らないのは代謝が落ちたからですか?
-
体重が減ると消費エネルギーは少し下がりますが、総説では、それ以上に食欲が強まることが停滞の大きな要因と考えられています。減量後は食欲にかかわるホルモンの変化が1年後も続いていたという研究もあります。
- 体脂肪率は毎日測ったほうがよいですか?
-
e-ヘルスネットは、体脂肪率の正確な測定は困難で、機種によって推定方法や判定基準が異なることもあるとしています。一定の誤差があることを理解したうえで、増減の傾向を見る目安として使いましょう。
まとめ:停滞は多くの人に起こる。記録を持って医師に相談する

体重が止まるのは、減量に取り組む多くの人に起こる経過です。体が食欲を強めて体重を戻そうとするしくみを知っておくと、自分を責めずに次の手を考えやすくなります。
- 体重は、はじめに減り、数か月で止まる経過が広くみられる
- 体重が減ると、消費エネルギーの低下以上に食欲が強まる
- 食事は極端に減らさず、主食・主菜・副菜をそろえて具体的な目標にする
- 座っている時間を減らし、日常の活動量を増やす
- 減量の薬が適応外の使用なら、公的な救済制度の対象外。説明を受けて判断する
出典
- Hall KD, Kahan S. Maintenance of Lost Weight and Long-Term Management of Obesity. Med Clin North Am. 2018;102(1):183-197 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5764193/
- Sumithran P, et al. Long-term persistence of hormonal adaptations to weight loss. N Engl J Med. 2011;365(17):1597-1604 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22029981/
- 厚生労働省 e-ヘルスネット(2026年10月19日閲覧):肥満と健康/肥満・メタボリックシンドローム予防の食事/身体活動とエネルギー代謝
- 厚生労働省 第21回医薬品等行政評価・監視委員会 資料2-1「糖尿病治療薬等の適応外使用に関連した注意喚起の取組等」2025年9月10日 https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001559953.pdf
- 厚生労働省「医療広告ガイドライン」令和6年9月13日最終改正 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001304536.pdf
- 厚生労働省「美容医療に関する取扱いについて」令和7年8月15日 医政発0815第21号 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9325
