AGA治療を始める前に自分で整理しておきたいのは、家族歴、薄くなっている場所、変化のスピードです。どれも、診察の最初に医師から聞かれる内容です。
あわせて知っておきたいのは、生活習慣を整えればAGAの進行を止められる、という根拠は示されていないことです。この記事では、男性のAGAについて、診察の前に自分で確認できることと、生活習慣や遺伝について言えること・言えないことを、日本皮膚科学会の資料をもとに分けて説明します。
この記事のまとめ
- AGAの診断は問診(家族歴・経過)と視診から。自分で整理した情報がそのまま役立つ
- AGAの発症には遺伝と男性ホルモンが関わる。関係する遺伝子は母方由来のものだけではない
- 生活習慣の見直しはAGA治療の代わりにならない。禁煙・節酒もガイドラインの評価項目にない
- 抜け毛が急に増えた・円形に抜けたときはAGA以外の病気の可能性。早めに皮膚科へ
※日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」と皮膚科Q&Aによるもの。詳細は本文で。
この記事の書き方について
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この記事は男性のAGA(男性型脱毛症)を対象にしています。医療についての記載は、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」と皮膚科Q&A「脱毛症」(2026年10月15日時点)によるものです。この記事は一般的な情報で、診断や治療の判断は医師の診察で行われます。記事の作り方はコンテンツ制作方針に記載しています。
治療を始める前に、なぜ自己分析が必要なのか
薄毛の原因は一つではなく、原因によって治療法が変わります。自分で整理した家族歴や経過は、医師が診断する際の材料になり、説明された治療方針を理解する助けにもなります。
薄毛の原因はAGAだけではない
抜け毛の原因はAGAだけではなく、円形脱毛症、甲状腺の病気や膠原病に伴う脱毛、薬剤の副作用による脱毛などもあり、原因によって治療法は異なります(皮膚科Q&A「脱毛症」Q4)。
AGAの治療は長く続けるものです。始める前に自分の状態を整理しておくと、次のことに役立ちます。
- 自分の薄毛がAGAらしいのか、ほかの原因(病気、薬の副作用、身体への負担など)が考えられるのかを、医師に相談するときの材料になる。
- 原因がわかれば、それに合った治療を医師と相談しやすくなる。
- 治療を選ぶ理由を自分でも理解しておくことで、長く続ける治療に納得して取り組みやすくなる。
自己チェックは、医師の診断の代わりにはなりません。自分の状態を整理して、診察で伝えやすくするための準備と考えてください。整理しておくと、診察で聞きたいことも明確になります。
遺伝的リスクを読み解く:家系図からわかること、わからないこと

ガイドラインは、AGAの発症には遺伝と男性ホルモンが関与するとし、遺伝的な背景としてX染色体上にある男性ホルモン受容体の遺伝子の多型や、常染色体(17q21・20p11)にある関連遺伝子が知られていると説明しています(男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版)。X染色体は母親から受け継ぐため「母方の祖父を見よ」と言われますが、関係する遺伝子はそれだけではありません。日本人男性での発症頻度は20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40数%と、年齢とともに高くなります。
母方・父方の両家系から薄毛のパターンを探る
家族歴を整理するときは、母方の祖父だけでなく、父方の祖父や父、おじ、兄弟など、両家系の男性の薄毛の状況を確認しましょう。
重要なのは、単に「薄いかどうか」だけでなく、「どの年齢で始まったか」「進行のスピードはどうか」「薄毛のパターンはどうか」といった情報です。診察で家族歴を伝えるときに、発症年齢や進行の速さもあわせて伝えられます。
家系を確認する目的は、診察で医師に伝える家族歴を整理し、早めに相談するかどうかを考える材料を得ることです。
| チェックするポイント | 確認すべき内容 | 得られる示唆 |
|---|---|---|
| 発症年齢 | 薄毛が目立ち始めたおおよその年代 | ご自身の治療開始のタイミングを考える参考に。 |
| 進行スピード | 気づいてから数年の変化が大きかったか | 診察で家族歴として伝える材料になる。 |
| 脱毛パターン | 生え際(M字)からか、頭頂部からか、またはその両方か | 自分の変化と見比べる目安になる。 |
| 治療歴 | 血縁者が治療を行った経験があるか、効果はどうだったか | 診察で家族歴として伝える参考情報になる。 |
ただし、家系から分かることには限りがあります。若くして亡くなった人や、離れて暮らす親族の情報は分からないこともあり、血縁者の薄毛がAGAだったかどうかも、診察を受けていなければ分かりません。参考情報の一つとして扱いましょう。
遺伝子検査の現状と解釈上の注意点
近年では、自宅で唾液や口腔内細胞を採取して送るだけで、薄毛リスクに関連する複数の遺伝子を調べられるサービスが提供されています。これらの検査は、ご自身の遺伝的な体質を「数値」や「タイプ」として知る手がかりになります。
一般的な遺伝子検査では、薄毛の発症に関与することが報告されている複数の遺伝子座(SNP)を解析します。結果は「リスクが高い」「標準的」「リスクが低い」など、相対的な評価で示すサービスが多くあります。
検査結果を活かす上で、最も大切なのは科学的限界を理解することです。現在の遺伝子検査でわかるのは、あくまで「関連が報告されている遺伝的変異の有無」であって、これがそのまま「絶対に薄毛になる/ならない」を決定するものではありません。薄毛には、検査の対象になっていない遺伝子も関わります。
- 検査結果は「現時点の科学的知見に基づく確率論的評価」と捉える。
- 「リスクが低い」という結果でも、薄毛にならないことを意味するわけではない。
- 「リスクが高い」という結果でも、発症の時期や程度が決まるわけではない。気になる変化があれば結果にかかわらず医師に相談する。
ガイドラインが診断の方法として挙げているのは、問診(家族歴・脱毛の経過)と視診、拡大鏡やダーモスコピーです(男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版)。家系や遺伝子検査の情報は参考材料の一つであり、それだけで診断や治療の要否が決まるわけではありません。次の章では、生活習慣について言えることと言えないことを整理します。
生活習慣と薄毛について言えること・言えないこと
生活習慣と抜け毛の関係について、日本皮膚科学会は「これをすれば髪の毛が抜けなくなるという特別な予防法があるわけではない」としています(皮膚科Q&A「脱毛症」Q18)。そのうえで、髪の新陳代謝にはビタミンやミネラルが関係するためバランスのとれた食生活を、身体に過度の負担がかかると休止期脱毛が起こることがあるため無理をせず規則正しい生活を、と勧めています。
食事・睡眠・休息を振り返るチェックリスト
以下は、学会が勧める「バランスのとれた食生活」「適度な休息」「規則正しい生活」ができているかを振り返るための目安です。薄毛の進行度やAGAのなりやすさを測るものではありません。
- 食事:タンパク質(肉、魚、大豆、卵)、亜鉛(牡蠣、レバー、ナッツ)、鉄分(レバー、赤身肉、ひじき)を意識して摂取できているか。
- 食事:加工食品や糖質の多い間食、外食の頻度が高すぎないか。
- 睡眠:毎日ほぼ同じ時間に寝起きし、睡眠が足りていると感じられるか。
- 睡眠:寝る直前までスマートフォンやパソコンの画面を見ていないか。
- ストレス:仕事や人間関係などで慢性的なプレッシャーを感じる状態が続いていないか。
- ストレス:趣味や運動など、気分転換やリラックスできる時間を定期的に作れているか。
チェックで気になる項目があっても、それがそのまま薄毛の原因とは限りません。一方で、抜け毛が急に増えた場合は、大きな手術、重い感染症、過激なダイエットなど身体に負担がかかったあとに起こる休止期脱毛や、甲状腺機能低下症・亜鉛欠乏症などほかの病気に関連する脱毛のこともあります(皮膚科Q&A「脱毛症」Q17)。AGAとは治療が異なるため、自己判断せず皮膚科で相談してください。
喫煙・飲酒と薄毛の関係
喫煙や過度の飲酒は、全身の健康のために見直したい習慣です。ただし、「ニコチンが頭皮の血流を妨げて薄毛になる」「飲酒で髪の栄養が奪われる」といった説明を裏づける根拠は、この記事では確認できませんでした。日本皮膚科学会のガイドラインが有用性を評価している14の項目にも、禁煙や節酒は含まれていません(男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版)。禁煙や節酒は体のために取り組み、薄毛については医師に相談しましょう。
生活習慣を見直しても、AGAの治療の代わりにはならない
AGAは、男性ホルモンが毛乳頭で活性の強い形に変えられ、毛の成長期が極端に短くなることで起こります(皮膚科Q&A「脱毛症」Q6)。発症には遺伝と男性ホルモンが関わるとされ(ガイドライン2017)、生活を整えるだけで進行を止められるという根拠はありません。
「生活習慣を整えれば細くなった毛が太く戻る」といった説明を見かけることがありますが、その根拠は示されていません。ガイドラインで「行うよう強く勧める」とされているのは、フィナステリド・デュタステリドの内服とミノキシジルの外用です(治療の詳細は後半の章で説明します)。
毛をつくる毛包が強くダメージを受けると、細く弱い毛しかつくれなくなることがあります。日本皮膚科学会は、心配な場合はできるだけ早く医療機関を受診するよう勧めています(皮膚科Q&A「脱毛症」Q5)。
生活習慣の見直しは、治療と並行して体調を整えるためのものと考えてください。
AGAについてよく見かける説と、根拠として言えること
薄毛については、出典がはっきりしない説が多く出回っています。よく見かける説について、日本皮膚科学会のガイドラインと皮膚科Q&Aで確認できる範囲をまとめました。
| よく見かける説 | 日本皮膚科学会の資料で言えること |
|---|---|
| 母方の祖父が薄毛だと遺伝する | X染色体(母親から受け継ぐ)上の男性ホルモン受容体の遺伝子の多型に加え、常染色体(17q21・20p11)にも関連する遺伝子が知られている。母方だけで決まるわけではない(ガイドライン2017) |
| 生活習慣を整えれば防げる・止まる | 「これをすれば髪の毛が抜けなくなるという特別な予防法があるわけではない」とされている(皮膚科Q&A「脱毛症」Q18) |
| タバコ・お酒で薄毛になる | ガイドラインが評価している14の項目に、禁煙・節酒は含まれていない。この記事では裏づけを確認できなかった(ガイドライン2017) |
| 育毛剤を使えば生える | 成分によって評価が違う。アデノシンの外用はB(行うよう勧める)、t-フラバノン、カルプロニウム塩化物、サイトプリンおよびペンタデカンの外用はC1(行ってもよい)(ガイドライン2017) |
| シャンプーや頭皮マッサージで防げる | ガイドラインで評価されているのは抗真菌薬ケトコナゾールの外用(C1:行ってもよい)で、一般的なシャンプーや頭皮マッサージを評価した項目はない(ガイドライン2017) |
| サプリメントで生える | ガイドラインにサプリメントを評価した項目はない。日本皮膚科学会は、髪の新陳代謝にビタミンやミネラルが関係するため、バランスのとれた食生活を勧めている(皮膚科Q&A「脱毛症」Q18) |
| 遺伝子検査でAGAかどうかわかる | ガイドラインが診断の方法として挙げているのは、問診・視診・拡大鏡・ダーモスコピー(ガイドライン2017) |
推奨度はガイドライン2017年版の表記(A:行うよう強く勧める、B:行うよう勧める、C1:行ってもよい)です。ガイドラインに項目がないことは、効果がないと示されたという意味ではなく、評価の対象になっていないという意味です。
薄毛の進行度を自分で確認する

家族歴を整理したら、次はいまの状態を確かめます。ここでは、自分で確認できる脱毛のパターンと変化の速さの見方を説明します。AGAかどうかの診断は医師が行います。
脱毛パターンと進行速度から現在地を確認する
AGAでは、生え際(M字)の後退と、頭頂部の薄毛がみられます。欧米ではNorwoodの分類が使われ、日本ではこれに頭頂部が薄くなるタイプ(高島分類のII vertex)を加えた分類が広く使われています(男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版)。
分類の図と見比べることで、自分の薄毛がどのタイプかを大まかに把握できます。あわせて見ておきたいのが「過去と比べてどれだけ変わったか」です。短い期間で変化がはっきりわかる場合は、早めに医師に相談しましょう。
抜け毛の本数にばかり目が行きがちですが、「毛の太さの変化」も初期の薄毛に気づく手がかりです。AGAでは、男性ホルモンの作用で毛の成長期が短くなり、短く細い毛に変わっていきます(ミニチュア化)(皮膚科Q&A「脱毛症」Q6)。抜け毛の本数が変わらなくても、生えてくる毛が細くなっている場合は、進行が始まっている可能性があります。
正面、頭頂部、生え際をそれぞれ撮影し、Norwood分類の図と比較します。特に、生え際の角が深くなっていないか、頭頂部の地肌の見え方が変化していないかを確認しましょう。
1年前、3年前の写真があれば、現在の写真と並べて比較します。髪型やライティングの影響を考慮しつつ、生え際のラインや頭頂部のボリューム感の変化を観察します。これが進行速度の最もわかりやすい指標です。
シャンプー時やブラッシング後の抜け毛を集め、長さや太さを見比べます。AGAでは毛の成長期が短くなり、短く細い毛に変わるとされています(皮膚科Q&A「脱毛症」Q6)。短く細い抜け毛が多く混じる場合は、医師に相談する目安になります。
自己診断ツールの活用とその限界
インターネット上には、質問に答えるだけで薄毛の進行段階やリスクを診断するツールが数多く存在します。これらは、客観的な自己評価の第一歩として、自分の状態を意識するきっかけにはなります。
しかし、これらのツールには明確な限界があります。多くのツールは、あくまで統計的な確率や一般的なパターンに基づいた推測であり、個々の毛包の状態や、他の脱毛症の可能性を鑑別することはできません。例えば、円形脱毛症やびまん性脱毛症など、AGAとは原因も治療法も異なる症状が隠れている場合があります。
| よくある抜け毛の範囲 | 医師に相談したいサイン |
|---|---|
| 1日の抜け毛はおおよそ100本程度まで(個人差・季節差がある) | 明らかに抜け毛の量が増えた |
| 抜けた毛の長さや太さにあまりばらつきがない | 短く細い毛が多く混じる |
| 頭皮全体からまんべんなく抜ける | 生え際や頭頂部に集中する、または円形に抜ける |
抜け毛の量の目安は皮膚科Q&A「脱毛症」Q1によります。表は目安で、診断は医師が行います。
自己診断の最も有効な活用法は、「経過観察の記録ツール」として使うことです。
スマートフォンを用いて、一定の間隔(例えば月に1回)で同じ条件(髪型、照明、角度)で頭皮の写真を撮り続けることをおすすめします。
日本皮膚科学会も、変化に早めに気づいて受診できるよう、普段から抜け毛の量や頭皮の状態を把握しておくことを勧めています(皮膚科Q&A「脱毛症」Q18)。記録は、ゆっくりとした変化を自覚するのに役立つだけでなく、医師に相談する際の客観的な資料にもなります。
自己チェックは現状を把握するための補助で、診断と治療方針は医師の診察で決まります。ここで整理した情報は、診察で自分の状態を伝える材料として使いましょう。
整理した情報を診察でどう伝えるか
ここまで、家族歴、生活習慣、いまの進行度の見方を説明してきました。ガイドラインによると、AGAの診断は問診で家族歴や脱毛の経過を聴き、視診で生え際の後退や前頭部・頭頂部の毛が細く短くなっていることを確認して行います。拡大鏡やダーモスコピーも使われます(男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版)。つまり、自分で整理した情報は、そのまま問診で役立ちます。
AGAの診察の前にメモしておきたいこと
次の表の項目をメモしておくと、限られた診察時間で必要な情報を伝えられます。
| 項目 | メモしておくこと |
|---|---|
| 家族歴 | 父・祖父・兄弟など、誰が何歳ごろから、どの部位が薄くなったか |
| 経過 | いつ気づいたか。昔の写真があれば持参する |
| 部位 | 生え際(M字)か、頭頂部か、その両方か |
| 抜け毛 | 量が急に増えたか。円形に抜けた部分はないか |
| 体調・既往 | 最近の手術・病気・急な減量、甲状腺などの持病 |
| 薬・育毛剤 | 服用中の薬、使っている育毛剤や外用薬 |
| 健診の予定 | PSA検査(前立腺がんの検査)を受ける予定があるか |
家族歴は発症しやすさの手がかりにはなりますが、それだけで治療の要否が決まるわけではありません。治療を考えるうえで重要なのは、いま実際に生え際や頭頂部に変化が起きているかどうかです。
生活の見直しより早めに受診したいケース
次のうち1つでも当てはまる場合は、生活習慣の見直しで様子を見るより先に、皮膚科やAGA外来で相談してください。原因によって治療法が異なり、治療が遅れると毛が生えなくなる脱毛症もあります。
- 生え際の後退や頭頂部の地肌の透け感を自覚している
- 写真で比べると、半年〜1年で変化がわかる
- 抜け毛が急に増えた(大きな手術・重い感染症・過激なダイエットのあとなど)
- 円形に抜けている、または脱毛している部分の皮膚に赤みや硬さなどの異常がある
- 体毛の変化やだるさなど、髪以外にも体調の変化がある
甲状腺機能低下症、副腎皮質機能不全症、亜鉛欠乏症、膠原病、白癬菌の感染などでも脱毛が起こることがあり、エリテマトーデスやケルスス禿瘡では治療が遅れると永久に毛が生えなくなることがあります(皮膚科Q&A「脱毛症」Q17)。
日本皮膚科学会は、AGAの主な治療法として外用療法、内服療法、自家植毛術の3つを挙げています。AGAは「病気」ではなく、どちらかと言えば「加齢変化の一種」と解釈されているため、有効な治療の多くは保険診療で受けられません(皮膚科Q&A「脱毛症」Q7)。
「生活習慣を直せば回復する」と考えて受診を先送りにしないことも大切です。ガイドラインは、日本人男性のAGAは20代後半から30代にかけて目立ちはじめ、徐々に進行すると説明しています(男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版)。
AGA治療の主な選択肢と、リスク・副作用
日本皮膚科学会のガイドラインでは、治療ごとに推奨度が示されています。主なものを抜き出しました(男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版)。
| 治療 | ガイドラインの推奨度(男性) | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| フィナステリドの内服 | A(行うよう強く勧める) | 服用中は前立腺がんの検査に使うPSAの値が約半分に下がる |
| デュタステリドの内服 | A(行うよう強く勧める) | 同上。健診などでPSA検査を受けるときは服用を伝える |
| ミノキシジルの外用(男性は5%) | A(行うよう強く勧める) | 外用剤で最も勧められている薬剤 |
| 自毛植毛 | B(行うよう勧める) | 内服・外用で効果が十分でなく、ほかに手段がない場合に、経験と技術のある医師が行うことが条件。手術のため費用がかかる |
| LED・低出力レーザー照射 | B(行うよう勧める) | ガイドライン作成時点では、試験で使われた機器は国内で未認可。機器によって光の種類や出力が異なる |
| ミノキシジルの内服 | D(行うべきではない) | 国内で内服薬として認可されておらず、AGA治療薬として認可している国もない。動悸・息切れ・むくみなど心血管系の副作用の記載がある |
推奨度はガイドライン2017年版の表記です。治療を選ぶときは、医師に効果の見込み・副作用・費用を確認してください。
ガイドラインは、デュタステリドについてリビドー(性欲)減少・インポテンツ・射精障害などの性機能の副作用の報告をあげ、十分な説明と同意が必要としています。フィナステリドについては、頻度は明らかではないものの、まれに肝機能障害があらわれることがあるとしています。どちらも国内の臨床試験は20歳以上の男性を対象に行われたため、20歳未満での安全性は確立していません(ガイドライン2017)。
ミノキシジルの外用では、かゆみ、赤み、フケのような皮むけ、毛包炎、かぶれ、顔の多毛などが報告されています(ガイドライン2017)。
フィナステリドは、少なくとも6か月程度は内服を続けて効果を確かめるべきとされ、内服をやめると効果は消失するとされています(ガイドライン2017)。
フィナステリドやデュタステリドを内服すると、前立腺がんのときに高くなるPSAの値が約半分に下がります。ガイドラインは、服用中にPSAを測る場合は2倍した値を目安に評価すべきとしています(ガイドライン2017)。皮膚科Q&Aも、健康診断の際などには見逃されないように注意が必要としています(皮膚科Q&A「脱毛症」Q7)。健診や人間ドックでPSA検査を受けるときは、服用していることを伝えておきましょう。
自分で整理した情報は、診察を有意義なものにする材料になります。漠然と「薄毛が気になる」と伝えるのではなく、「祖父と父はこのようなパターンで、1年前の写真と比べると生え際がここまで下がった」と具体的に伝えることで、医師が診断や治療方針を考える手がかりになります。
AGAの自己チェックについてよくある質問
- 母方の祖父が薄毛だと、自分もAGAになりますか?
-
それだけでは決まりません。ガイドラインは、AGAの発症に遺伝と男性ホルモンが関わるとし、母親から受け継ぐX染色体上の遺伝子に加えて、常染色体上の関連遺伝子も知られているとしています。家族歴は、父方も含めて整理し、診察で伝える材料にしましょう。
- AGAは何歳ごろから始まりますか?
-
ガイドラインは、日本人男性のAGAは20歳代後半から30歳代にかけて目立つようになり、徐々に進行するとしています。発症頻度は20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40数%と、年齢とともに高くなります。
- 生活習慣を整えればAGAは予防できますか?
-
日本皮膚科学会は、これをすれば髪の毛が抜けなくなるという特別な予防法があるわけではないとしています。バランスのとれた食生活や規則正しい生活は勧められていますが、生活を整えるだけでAGAの進行を止められるという根拠は示されていません。
- AGAの治療をやめるとどうなりますか?
-
ガイドラインは、フィナステリドについて、内服を中止すると効果は消失するとしています。少なくとも6か月程度は続けて効果を確かめるべきともされています。やめるかどうかは、自己判断せずに医師と相談しましょう。
- AGAの治療に保険は使えますか?
-
日本皮膚科学会は、AGAは「病気」ではなく、どちらかと言えば「加齢変化の一種」と解釈されているため、有効な治療法の多くは保険診療で受けられないとしています。
- 女性もAGAになりますか?
-
ガイドラインでは、女性の薄毛は「女性型脱毛症」として扱われ、頭頂部の比較的広い範囲が薄くなるパターンが多く、更年期に多くなるとされています。男性とは薄くなり方も勧められる治療も違うため、この記事の内容は当てはまりません。女性の薄毛についてはFAGA(女性の薄毛)とはの記事で整理しています。
まとめ:整理した情報を持って、早めに相談する
AGAの診断は、問診で家族歴や経過を聴き、生え際や頭頂部の毛の変化を確かめることから始まります。自分で整理した情報は、そのまま診察で役立ちます。
- 家族歴は父方・母方の両方を、発症年齢や進行の速さとあわせて整理する
- 生活習慣を整えることはAGA治療の代わりにならない。抜け毛が急に増えたときはほかの病気の可能性も
- 変化に気づいたら、生活の見直しだけで様子を見続けず、早めに皮膚科やAGA外来で相談する
AGA治療を受けられるクリニックを探している場合は、治療薬ごとの費用やオンライン診療の有無を公式サイトで確認できます。
湘南AGAクリニック
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出典
- 公益社団法人日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」日皮会誌127(13) 2763-2777 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
- 公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」(Q1 毛が生えかわる仕組み/Q4 脱毛症とは/Q5 脱毛症と再生/Q6 男性型脱毛症の仕組み/Q7 男性型脱毛症の治療/Q17 他の病気と関連する脱毛/Q18 抜け毛を防ぐ生活上の注意点) https://qa.dermatol.or.jp/qa11/index.html
- 厚生労働省「美容医療に関する取扱いについて」令和7年8月15日 医政発0815第21号 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9325
